vol.4AFTERCOLORS が描く、
淡くミステリアスな感性経験
「香りが揺らす心の世界」
感性心理学で読む MAGMANIA AFTERCOLORS
それではAFTERCOLORSから立ち上がる、私自身の感性経験を観察してみましょう。まず、AFTERCOLORSには五種類の香りがありますが、どの香りからも「どこかで嗅いだことがある気がするけど、今まで嗅いだことのない匂い」、という印象を受けました。例えばローズ系のフレグランスは定番ですが、「Dusky Rose」の香りは、確かにローズなんだけれども、これまでに嗅いだことのないローズの匂い、という印象です。これはAFTERCOLORSの香りの名前にも見ることができます。Dusky、Misty、Foggy、Faded、Veiledのように、本当にどの香りも、淡くにじみ、掴もうとすると消えてしまいそうなミステリアスさがあります。面白いことに、それぞれの香りが、複数の色を帯びているようにも感じられました。ピンク、水色、淡い黄色の絵具がキャンバスでゆっくり溶け合う、あの一瞬のような、どこか切ない情景が思い浮かびます。
どの香りもミステリアスな雰囲気を纏っていますが、それぞれの香りは個性があり、唯一無二の香りです。私自身も、私の友人たちも、フレグランスをファッションのアイテムの一部として楽しんでいます。AFTERCOLORSのそれぞれの香りも、シーンや気分、なりたい自分を演出をしたり、使い分けることでワクワクが増すかもしれません。香りを「スタイル」として楽しむ姿勢は、まさにMAGMANIAの目指す世界そのものだと思います。
今回、コラムを書くにあたって、香りの世界を調べてみましたが、香りとはつくづく面白いものだと思います。今回AFTERCOLORSの香りを初めて嗅いだとき、そこには私の知らないはずの香りなのに、瞬間的に多くの景色や色、そして「こうありたい自分」までが連想されました。まさに、感覚を通したダイレクトな、時に視覚的なコミュニケーション。プルーストの言葉が腑に落ちるような体験でした(笑)香りが視覚と響き合いながら心を揺さぶる…まさにMAGMANIAの世界観の経験でした。
さて、コラムも終盤となってきましたが、いかがでしたか?
香りの心理学、今回はそのほんの入り口をご紹介しました。私自身の研究テーマ、そしてMAGMANIAの理念にもあるように、香りは私たちの記憶、感情に触れ、私たちの本能にダイレクトに、そして時に視覚的に語り掛けてくるような感性経験を、毎日の生活の中にもたらしてくれる存在。私たちの毎日を彩り、なりたい自分をデザインするアシストをしてくれます。
さぁ、AFTERCOLORSの香りは、皆さんの日常にどんな色を添えてくれるでしょうか。
香りの不思議を探る私たちの旅は、まだ始まったばかりです。
JAN MIKUNI [三國 珠杏]
ウィーン大学 心理学部 ポストドクトラル・リサーチャー
オーストリア・ウィーン大学で「日常の感性経験」を研究する心理学者。
身近な空間やアート、日々の出来事に潜むデザインが、人の評価・感情・行動にどのような影響を及ぼすのか、その心理メカニズムを中心に探究している。
また、感性経験が心身の健康や社会的つながり、暮らしの豊かさに与える効果にも注目。感性の力を通して、現代社会の課題に寄り添う新たな視点と知見を提示することを目指し、研究を重ねている。
https://jan-mikuni.com/
引用文献
Green, J. D., Reid, C. A., Kneuer, M. A., & Hedgebeth, M. V. (2023). The proust effect: Scents, food, and nostalgia. Current opinion in psychology, 50, 101562. https://doi.org/10.1016/j.copsyc.2023.101562
Herz, R. S. (2016). The role of odor-evoked memory in psychological and physiological health. Brain sciences, 6(3), 22. https://doi.org/10.3390/brainsci6030022
Royet, J. P., Zald, D., Versace, R., Costes, N., Lavenne, F., Koenig, O., & Gervais, R. (2000). Emotional responses to pleasant and unpleasant olfactory, visual, and auditory stimuli: a positron emission tomography study. Journal of Neuroscience, 20(20), 7752-7759. https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.20-20-07752.2000