「香りが揺らす心の世界」

感性心理学で読む MAGMANIA AFTERCOLORS

vol.1感性経験としての「香り」

皆さん、こんにちは!
MAGMANIAのコラムを担当することになりました、感性心理学者のJANです。
このコラムでは、心理学者である私が「香り」という不思議な感覚の世界をひも解いていきます。香りはどんな心理効果をもたらすのか。私たちの日常をどうやって彩るのか。私自身まだ知らないことばかりですが、このコラムを通して、皆さんと一緒に、その謎へ迫っていきたいと思います。

感性経験としての「香り」

さて、皆さんは「感性経験」という言葉を聞いたことはありますか?
「見る」「聞く」「触る」「味わう」「嗅ぐ」。私たちは日々、さまざまな情報を知覚していますが、そのふとした瞬間に心が揺れ動くことがありますよね。たとえば、美味しいご飯を食べた後の幸福感、新しい服に袖を通したときのワクワク感、アートを見たときに感じる美しさ。こうした、毎日の生活の中で、心がふわっと動く瞬間こそが、まさに感性経験です。
私はこういった経験が、どのように立ち上がってくるのか、そして私たちの記憶や感情、ウェルビーイング、アイデンティティを形づくるのかについて研究しています。現代社会では、情報量は増え、その情報を処理するスピードもどんどん速くなっています。そんな時代だからこそ、「自分の感覚から立ち上がる経験」に立ち返ることが、これまで以上に求められていると思います。
そして「香り」もまた、代表的な感性経験のひとつ。香りは古くから記憶や感情を呼び起こし、私たちの日常に寄り添ってきました。MAGMANIAのコンセプト「感性と本能を解き放つ香りの世界へ」は、その象徴と言えるでしょう。
では、香りは私たちにどんな世界を見せてくれるのか、早速探っていきましょう。


 


JAN MIKUNI  [三國 珠杏]
ウィーン大学 心理学部 ポストドクトラル・リサーチャー

オーストリア・ウィーン大学で「日常の感性経験」を研究する心理学者。
身近な空間やアート、日々の出来事に潜むデザインが、人の評価・感情・行動にどのような影響を及ぼすのか、その心理メカニズムを中心に探究している。
また、感性経験が心身の健康や社会的つながり、暮らしの豊かさに与える効果にも注目。感性の力を通して、現代社会の課題に寄り添う新たな視点と知見を提示することを目指し、研究を重ねている。
https://jan-mikuni.com/

引用文献

Green, J. D., Reid, C. A., Kneuer, M. A., & Hedgebeth, M. V. (2023). The proust effect: Scents, food, and nostalgia. Current opinion in psychology, 50, 101562. https://doi.org/10.1016/j.copsyc.2023.101562

Herz, R. S. (2016). The role of odor-evoked memory in psychological and physiological health. Brain sciences, 6(3), 22. https://doi.org/10.3390/brainsci6030022

Royet, J. P., Zald, D., Versace, R., Costes, N., Lavenne, F., Koenig, O., & Gervais, R. (2000). Emotional responses to pleasant and unpleasant olfactory, visual, and auditory stimuli: a positron emission tomography study. Journal of Neuroscience, 20(20), 7752-7759. https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.20-20-07752.2000